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宇宙と心の共通点

2018年6月1日

「車いすの物理学者」イギリスのスティーヴン・ホーキング博士が今年3月14日に亡くなりました。享年76でした。
ホーキング博士はケンブリッジ大学大学院2年生だった21歳のとき、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気を発症しました。
ALSとは運動ニューロン(筋肉を動かす神経細胞)が変成して体が動かせなくなる病気です。予後は悪く、治療法は見つかっていません。日本でも9千人ほどのかたがこの病気と闘っています。

きホーキング博士は余命5年と診断されました。しかし博士は「将来は暗雲でおおわれていましたが、驚くべきことに私は目の前の生活を以前よりもっと楽しみだしました」と述べています。
「研究を進めだし、病気を宣告されたころに妻と出会い、婚約しました」
不治の病を宣告されたのにもかかわらず持っていたこの前向きな気持ちが、博士のその後の人生を決定づけたのは言うまでもありません。
「21歳のとき、私の可能性はゼロになってしまいました。それからの全てはボーナスでした」

士の病気はその後奇跡的に進行を止めました。そしてその極めて優れた頭脳で「ホーキングの宇宙論」を構築します。3人の子どもと3人の孫に恵まれました。
「私は動けないし人工音声でしか話せませんが、心の中は自由です」
病気であろうとなかろうと、博士は同じく優れた業績を残したことでしょう。しかし若くして患った難病によって、その鋭い洞察力と温かな人間性をより深く培ったことは間違いありません。

生労働省により現在331の疾病が難病に指定されています。治療法の研究のほか、家族に対する支援も政府によって行われています。
健康とは何であるのか? 病気になって初めて健康のありがたさがわかります。
日本の物理学者・寺田寅彦は「健康な人には病気になるという心配があるが、病人には回復するという楽しみがある」と言いました。

気はかかった本人にとっても家族など周りの人にとってもつらいものです。一日も早く良くなることを誰もが願います。
しかし病気がしてくれる贈り物があります。人の心の温かさや自分の心の奥底など、健康なときにはなかなか気づかない貴重なものを見せてくれます。またそうした体験によって人生に対するより深い洞察が得られることもあるのではないでしょうか。病気はつらいものですが、病気にならなければ味わえない幸せを味わうことができるのです。

ティーヴン・ホーキング博士は今年6月、アイザック・ニュートンをはじめとする多くの科学者が眠るウエストミンスター寺院に埋葬されます。
「障がいに妨げられず、うまくできることに集中すること。何かができないことを残念に思わないこと」
宇宙の秘密に最も近づいた人は、心の秘密にも通じていたのです。

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