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ま心のコラム

ウナギと貧しい子どもたち

2017年2月8日

「鰻沢」という昔話はこんな話です。
沢の魚を毒で獲る相談をしていた村人の所に、黒い服のお坊さんがやってきて「毒を流せば生き物が皆殺しになってしまう。だからやめてください」と言いました。村人たちはその通りと言いお坊さんを粟の団子でもてなしましたが、お坊さんが帰ったとやはり当初の話通り魚を毒で獲ることにしました。
沢に毒を流すと魚がたくさん浮かんできましたが、その中に大きなウナギが一匹まぎれていました。そのウナギをさばいてみると、昨日お坊さんに出した粟の団子が入っていたということでした。

ナギの稚魚であるシラスウナギは、国際自然保護連合によって絶滅の恐れがある「レッドリスト」に加えられています。
シラスウナギ激減の原因は、獲り過ぎによる個体数の減少や海流の変化、温暖化による海水温の上昇、あるいは住みかとなる清流の減少などが考えられていますが、はっきりした原因は分かっていません。
なぜなら、最近になってようやく産卵場所が分かってきたものの、ウナギの生態はいまだに謎の部分が多いからです。そのためか、ミクロネシアや台湾、日本各地にウナギを神の使いとみなす「ウナギ信仰」が見られます。ウナギはまさに神隠しのように消えてしまったのかもしれません。

界には、飢餓に命を脅かされている人々がいます。
ソマリア、モザンビーク、タンザニアなどのアフリカ諸国では国民の半数が1日2ドル未満で生活する貧困層です。カリブ海のハイチでは貧困率が8割に達し、2010年の大地震がもたらした混乱が続いています。インドの西にあるパキスタンの子どもは、半分近くが小学校にも通えません。
世界にはびこるそんな悲惨な状況に比べれば、ウナギの激減など取るに足りない問題のように思えるかもしれません。しかしウナギの立場に立つまでもなく、一見ささやかに見えるこのような問題も、世界の在り方に関わる大きな問題と同じ構造を持っていると言えるのです。

もが「良い生活をしたい」と思っていますが、何不自由ない生活を送っているのは、地球上の12パーセントの人々に過ぎません。その「恵まれた人々」の生活は、大多数の恵まれない人々の犠牲の上に成り立っていると言っても過言ではないでしょう。
ウナギもその地球上の恵まれていない仲間の一つでしょう。ぜいたく品として扱われたばかりに、絶滅の危機にまで追い込まれてしまいました。

進国の経済的に豊かな人々が、そうでない国々の人より幸せかと言えば、必ずしもそうとは言えない調査結果があります。抜け目ない競争に勝ち、お金にものを言わせてぜいたくをすることで、幸せになれるわけではないことが、テレビや新聞、インターネットで毎日報道されているのではないでしょうか。

当の幸せとは、心の充足です。心の充足とはいったい何によって得られるのか、周りをぐるっと見渡して考えるひとときをぜひとも持ちたいものです。

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