平和を思うひととき
2016年08月01日
「満蒙開拓団」は満州事変のあった1931(昭和6)年から1945(昭和20)年の太平洋戦争終戦まで、当時の満州国(現在の中国東北部)に国から送り込まれた入植者の人々のことです。「王道楽土」「五族協和」のスローガンのもと、およそ27万人の日本の民間人が満州で暮らしていました。
荒涼とした大地で厳しい冬の寒さにさらされたものの、戦時中の満州では物資不足や空襲にさらされた日本より、人々は比較的穏やかに暮らしていたそうです。しかしその実、実質的に日本を支配していた軍部による思惑は、傀儡国家満州の活性化とソ連との戦いを想定した兵站(戦闘以外の軍事業務)地の整備でした。
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昭和20年8月9日、ソ連軍が国境を越えて満州に侵攻すると状況は急転しました。満州に配備されていた関東軍は民間人を置き去りにしていち早く逃亡してしまったのです。
残された人々には想像を絶する過酷な逃避行が待ち受けていました。
「兵隊はどんどんかけて逃げる、負傷した兵士は自爆して死んでいく、その現場も見ました。それは大変なことでした」と石井先生も語っています。
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道なき道を逃げる人々を、飢えや伝染病が襲いました。また日本人に恨みを持つ現地の人々からの襲撃にも遭いました。万が一のときのために、人々には青酸カリが渡されていました。ソ連軍に捕らえられた人はシベリアに抑留されて過酷な労働をさせられ、またわずかなお金や食料と引き換えに小さな子供が売られて行き、中国残留孤児となりました。
22万3千人いた開拓団の人々うち、無事に故郷に帰りついたのは半分程度だったとも言われています。
今のこの平和な世の中からはとても想像もつきませんが、それはかつてこの日本で現実にあった出来事なのです。
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そしてそれは遠い過去の出来事ではありません。
中東のシリアやイラクでは人々の住むごく普通の町で銃撃や空爆、自爆テロが毎日のように行われています。独立したばかりのアフリカの国、南スーダンでは内戦が起き、調停が合意されたにもかかわらず市街地で銃撃戦が行われており、230万人もの人々が避難しています。
戦争を望む人は誰もいません。それなのに戦争が起きるのは、ほんの一握りの為政者の傲慢な思い違いのせいなのです。しかも戦争指導者たちは決して戦場には赴きません。命まで失ってしまうような悲惨な目に遭わされるのは、いつも戦争とは何の関係もない、子どもや老人を含めた何一つ身に覚えのない人々なのです。
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今の日本の平和な社会はただで手に入ったものでは決してありません。それは戦争の悲惨さをいやというほど経験した我々の先達の祈りが込められた社会なのです。
何百万人もの人々が亡くなり、核兵器さえも浴びた終戦直後の日本はおそらく歴史上世界で最も悲惨な場所のひとつでした。尊い犠牲となった多くの方のことに思いを馳せれば、この平和がどんなに貴重な価値を持っているかに気が付くはずです。そのことを静かに思うひとときが今年もまた訪れています。
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